デンマークの建築

デンマークの建築

2013年10月1日

コペンハーゲンのオペラハウスと演劇劇場

オペラ

オペラハウス
オペラハウス

ヘニング・ラーセン建築事務所設計のオペラハウスOperahusは、船舶会社のエーピー・ミラー・グループが建造費を負担した国家的な建築である。場所は、王宮から運河を挟んだ対岸。大理石教会から東へ、王宮の4つの建物を貫く直線をさらに東へ延ばして、対岸に渡った正面にある。舞台デザイナーである女王を支える王室と、劇場文化との結びつきを感じさせる。それでいて建物は、船底をイメージさせる設計で、船舶会社としての主張が強い。だが、デンマークが海運国であると知っている人はあまりいないのではないか。酪農王国、豚肉王国、デザイン大国、福祉先進国、ノーマリゼーション先進国と考えている人は多いだろう。エーピー・ミラーは、ヘニング・ラーセンの設計に注文をつけて、原案とはかなり違ったものになったと言われている。ラーセンはマルメの図書館建築の際にも設計変更を余儀なくされて、落成式には欠席したそうで、超一流の建築家でも、思い通りに造るのはむずかしいようだ。  オペラの建物は14階建てで、リハーサル室、衣装室など、全部で1000の部屋がある。劇場の観客席はオーケストラ・ピットの大きさにより1492席と1703席になる。2005年1月にこけら落としが行われ、オペラとバレエが上演されている。  オペラへはニューハウンの端から有料のボートで渡る。ボートに乗ることで日常生活から切り離されて、芸術の世界に入る。美しい建物で約3時間の夢の世界を体験し、再びボートで現実世界に戻ってくる。この設定が何より素晴らしい。

演劇劇場

演劇劇場前から出るオペラハウス行きのボート
演劇劇場前から出るオペラハウス行きのボート
演劇劇場
演劇劇場

 オペラの建設はかなり評判だったが、演劇劇場Skuespilhusetの建設はあまり話題に上らなかった。だが、ニューハウンから運河へ出ると、左手に建つ劇場と、その前の広がる木製のテラスの美しさに魅了させられる。水の向こうにはオペラの平たい屋根が張り出している。思わず「うーん」と唸ってしまう。この劇場とオペラは対になっている。設計者が違っていても、対を成している。ちなみに設計はルンゴード&トランベリー設計会社である。

 木製のテラスは、暖かい日には移動式のバー・カウンターが出せるようになっている。テラスに電気のコンセントや水道が埋め込まれている。主に夜に活躍する劇場なのに、昼間も、また劇場に入らない人にも楽しんでもらえるようになっている。ここで演じられるのはデンマーク語の演劇だけだ。わずか550万人だけが利用できる世界にしないために、劇場へ向かう道、ガラス張りの劇場の概観、椅子が配置されたテラスなど様々な工夫がなされている。みんな来てほしい、この場を好きになってほしいという願いが見えている。公共の建物は、こうでなくてはいけない。東京都庁のように、「ここは為政者の城だ、関係者以外は来るな」と主張するような建物を、税金で建てるのは本来ならおかしいことだ。為政者に擦り寄ることで生活し、民主主義を知らない人々が選んだ設計は、いつまでたっても誰からも愛されず、目に入ると悪いものを見たような気持にさせられる。そう考えると建築とは正直なものだと思う。その姿だけで、愛されたり、憎まれたりする。愛されたいと願うデザイナーは、それなりの仕掛けをしている。いい建築とはそういうものだということをコペンハーゲンの2つの芸術の殿堂で学んでほしい。

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