マルメの市立図書館

マルメの市立図書館

2013年9月30日

スウェーデンの建築

光をうまく使うラーセンらしいデザイン
光をうまく使うラーセンらしいデザイン
建物だけでなくインテリアもラーセンのデザイン
建物だけでなくインテリアもラーセンのデザイン
この椅子は販売されている
この椅子は販売されている
赤レンガ建ての旧館と円形の接合部
赤レンガ建ての旧館と円形の接合部

 スウェーデン第3の都会マルメは人口27万の古都。幅7~8kmのオーレスン海峡を隔てた対岸のコペンハーゲンと同様に、中世はニシン漁で繁栄した。1840年に設立されたコッカム重工業が造船や車両製造を続けたが、1970年代のスウェーデンの造船危機で撤退した。その後、マルメは沈滞を続けたが、90年代からITを市の柱とすべく努力を続け、勢いを盛り返した。

 マルメの市立図書館は、小さな旧市街の外側の緑地地帯に、1901年に建てられた建物を利用してきた。設計はJohn Smedbergで、もとは博物館として設計されたが、博物館はマルメ城に入り、ここは図書館として利用されてきた。赤レンガに青い銅貼りの尖塔がある建築は、デンマークの教会に似てクラシックな魅力がある。私はかつて市立図書館の斜め北側のアパートに住んだことがあるので、この建物への思い入れはかなりあり、建替え計画があると聞き残念に思った。マルメには古い建物はほとんど残っていない。新らしがり屋がマルメ人の性格なのだ。
90年代の初めに建替え計画が生まれ、指名コンペでヘニング・ラーセンの設計案が1等になった。古い建物を見直す流れからか、あるいはデンマーク人の建築家の影響かはわからないが、建替え計画そのものが変更になり、古い建物を残し、西側に新しい建物を造り、その間を円形の大きな建物をつなぐという形で1998年8月に完成した。東側の旧館Slottet(城)と、西側の新館Ljusets kalender(光の暦)の雰囲気は天と地ほど違う。ガラス張りの新館は外観も、内側も非常に美しくできている。つなぎの円形の建物は入口と受付、カフェ、芸術、文学部門になっている。その左右はガラス張りの廊下。円形の建物は、西側に残るマルメ城の円形の武器庫を象徴しているのかもしれない。

 新館に入ると、高さ18mの中央部の吹き抜けから光がさんさんと注がれている。ガラスを通して庭の緑も感じられ、ここで本を読むのが心から楽しいと思えるし、人々もそんな気持で本選びをしたり、ぱらぱらと本をめくったりしている。けっこう大きな建物なのに、利用している人の姿が目立つ。建物がいいと、人も誘われるのだろう。本を読むのに座る椅子もおしゃれで、配置も単純ではない。座りたくなる。

 旧館には児童図書や芸術専門書、視覚障害者のための話す本、マルメとスウェーデン南部のスコーネ地方の本が置かれている。中央の吹き抜けは、改築の前は中庭だったところ。ガラス屋根から存分に光が入ってくる。すてきなソファ、椅子、机があり、こちらでも本が読みたくなる。小さい子供たちも絵本を探ったり、読み聞かせを受けたりで、落ち着きがあるいい図書館だ。ヘニング・ラーセンの設計で1999年に改築された。

 図書館の機能としては、南スウェーデンの全地域に図書を配布できるようになっていて、移民向けの図書やDVD、視覚障害者向けの録音本なども充実している。蔵書は約50万冊、CDは2万枚、日刊紙160紙で、1日の貸出量は4,500冊。スウェーデンの図書館機能は世界最先端だが、本を個人で買う習慣があまりないので、それだけ市民の期待は大きく、居心地のいい図書館にする必要があるだろう。北欧の建築家も、図書館の設計には全力を投入して、いいアイディアを出している。アスプルンド設計のストックホルム市立図書館の美しさは格別だが、コペンハーゲンにできた国立図書館の新館も1階と2階を結ぶエスカレーターが美しく、しかも意表をつくデザインだ。どの図書館も自分の建築に誇りがあり、図書の利用でなくて建築の見学の人にも、資料を提供したり、建築書購入のコーナーを設けたりしている。

 ちなみに完成までに紆余曲折があったとのことで、ヘニング・ラーセン氏は完成式典には出席しなかったそうだ。たぶん、そのあとでこっそりと見にきているはずだ。これだけ魅力的で評価が高いと聞けば、設計者が見たくならないはずがない。

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