スウェーデンの夏至祭

スウェーデンの夏至祭

2014年12月17日

ヨーロッパの夏祭りと北欧

民族衣装が美しい
民族衣装が美しい
美しい花飾り
美しい花飾り
民族服が少なくなった
民族服が少なくなった
少しずつ立てていく
少しずつ立てていく
ほぼ立ち上がったティブレの柱
ほぼ立ち上がったティブレの柱
スカンセンの夏至祭
スカンセンの夏至祭
ティブレの楽隊
ティブレの楽隊

 キリスト教の国では、6月24日に聖ヨハネの日を祝う習慣があります。聖ヨハネはイエス・キリストの生誕より半年前に生まれ、キリストに洗礼を施した人とされています。キリスト、マリアと同様に、生誕の日が祝日になっている珍しい聖人だそうです。冬至であるクリスマス生まれのキリストに対比するように、聖ヨハネは夏至生まれになっています。1年で一番高く太陽が昇るこの日には、精霊たちが降りてくるとも考えられていました。シェークスピアが書いた喜劇「真夏の夜の夢」では、精霊のパックが大活躍しますが、そうした言われを上手に題材にして、楽しい夢の世界を作りあげてくれています。
 ヨーロッパの中部から南部にかけての国々では、古代から夏至の日に、焚き火を炊いて祝う習慣があります。豊作を祈願したり、炎や煙で収穫量を占ったり、若者たちの出会いの場にもなり、人々は火の回りを夜が更けるまで踊ります。いまでは、夏至の前夜に祝うところが多いようです。この習慣は北欧へと入ってきて、デンマーク、フィンランド、バルト諸国でもこのようにして祝われています。
 ヨーロッパ各国には、4月30日に焚き火を炊いて悪魔払いをするワルプルギスの夜祭がありました。続いて5月1日は、過去1年の決算を行い、新年度の始まりの日である休日でした。また5月5日前後にメイポールを立てる習慣があります。メイポール立ては、夏の訪れを祝う祭りで、春分の日と夏至の中間の日に祝われたようです。メイポールは草花で飾られました。この習慣が北欧に入ってきた頃、まだ5月初めは寒くて、花が咲く時期ではありませんでした。スウェーデンでは、メイポールを草花で飾ることができなかったそうです。

北欧の夏至祭

 デンマーク、フィンランド、ノルウェーでは、各町の公園や民俗博物館などで焚き火がたかれ、人々がその周囲で歌い、踊り、夜遅くまで楽しみます。ヘルシンキのセウラサーリ民俗博物館の庭では、高さ10mを越す大きな焚き火がたかれ、歌や踊りも加わって賑やかに、いつまでも暗くならない夏の日を楽しみます。
 ノルウェー南部のヴォスの周辺の村々では、この日に子どもたちの模擬結婚式が行われます。美しい民俗衣装で着飾った子どもたちが幾組ものカップルを作り、民俗音楽の演奏の中でパレードしたり、お菓子を食べたりと、楽しい午後を過ごします。それぞれの村で民俗衣装や結婚式のやり方に個性があるので、いくつかの村で見ると楽しさが増します。

スウェーデンで完成された祭典

 スウェーデンは歴史的には若い国で、南方の国々からの影響を強く受けてきました。北欧神話を生みましたが、バイキングの時代に入ってきたキリスト教に追いやられてしまいました。中世にはドイツ人が移り住み、新しい技術でスウェーデンに鉱工業を起こしました。さらにハンザ同盟を通じて都市を建設し、海路での通商ルートを開発し、ドイツからさまざまな習慣を持込みました。ワルプルギスの夜祭や夏至祭、ルシア祭はこうしてスウェーデンにやってきました。祭りの多くはキリスト教との関わりを持っていますが、メイデーと夏至祭だけは宗教とは関わりがありません。
 スウェーデンでは、メイポールMidsommarstångと夏至祭が結ばれました。5月1日は、19世紀の終わりに労働者の運動の日に変わりました。夏至祭は火祭りではなく、村の中心になる広場で、草花で美しく飾られたメイポールを立てていく形へと成長していきました。バイオリンを主体にした独特の民俗音楽の演奏があり、楽隊の行進があり、20人ほどの男性が力をあわせながら、長さ20メートルほどのメイポールを少しずつ立ち上げていく。立ち上がったら、楽隊が喝采の音楽を奏で、村人たちを喜びのダンスへと招く。メイポールの回りで、民俗ダンスの輪が幾重にも広がり、村人だけでなく、訪れた者は誰もが輪に招かれ、心から夏の訪れを楽しみます。ヨーロッパの様々な文化と習慣が、ここスウェーデンで子どもから老人までが十分に楽しめる、数時間のエンターテイメントに熟成されました。
 男性は白や黄色の細見のズボンに、白シャツの上に黒いチョッキ、さらに赤で縁取りをした黒いコートをまとい、黒い帽子で引き締めます。女性はスソの長いゆったりしたスカートの上に、赤い縦しまの模様が入ったエプロンをつけ、赤い太めの帯でアクセントをつけ、白いブラウスの胸に赤い花模様のショールを巻き、頭は花飾りや白いスカーフをかぶります。1人1人の姿が絵のように美しく、流れるように踊る姿はさらに輝きを増します。この大人たちの姿を見ながら、子どもたちは、「いつかぼくも、あの人のように男らしくなる」、「いつか私もあの人のように愛らしくなる」と憧れを持ちます。美しい伝統が、次ぎの世代の心に強い印象を焼き付けて、伝えられていきます。

スウェーデンの夏至祭の魅力

 スウェーデンでは毎年6月19日から26日の間の、夏至に最も近い土曜日をMidsommardagen(ミッドソンマルダーゲン)と呼びます。その前日Midsommarafton(ミッドソンマルアフトン)と合わせて2日間が祝日になり、盛大に祝われるのは前日の金曜日の夕方から夜にかけてです。
 金曜日の朝、人々は自宅の庭に、青地に黄色の十字が入った鮮やかな国旗を掲げます。
野原に出て白樺の葉や白いスズラン、赤や紫のレンゲソウ、マーガレット、タンポポなどの素朴な草花を集め、編みこんで大きな花飾りにしたり、花冠や花輪を作ります。自分自身、食卓、窓辺、ベランダ、玄関のドア、門柱、車、ボート、教会、夏至祭の会場などを花輪や緑の小枝で飾ります。
 スウェーデンでは、冬の木曜は豆のスープとか、夏の日曜に午後はプンシュという酒、8月はザリガニ・パーティーというように、曜日や季節と食事や飲物が結びついている例があります。夏至祭の料理は、ゆでたじゃがいも(新じゃがといいますが、6月のスウェーデンではまだできていない)にサワークリーム、香味野菜のディルdillを刻んでふりかけたものと、カレー風味やトマト風味の酢漬けのニシンmatjesill、飲み物には、ビールやアクアビット、そしてデザートにイチゴです。酢漬けのニシンはホテルの朝食に出ているのと同じ、ゆでたじゃがいもにサワークリームはレストランの夕食のメイン料理の添え物と同じ、デザートのイチゴは夏にスーパーで売っているものと同じ。祭の盛大さ、オリジナリティに比べて、なんて寂しい料理なのでしょう。でも、食材があまりなかったスウェーデンでは、この程度でもご馳走だったのです。それをいまでも夏至祭の日に偲んでいるのかもしれません。

夏至祭を見るには

ストックホルムでは、スカンセンで、金曜と土曜の14時頃から2時間ほどかけてメイポール立てが行われます。あまり広い広場ではないので、伝統愛好家と外国人観光客、夏至祭がない地方のスウェーデン人でぎっしり埋まります。民族音楽の演奏も聴けます。
 ヨーテボリでは金曜日の午後にSlottskagenで、マルメではPildammsparkenで、ささやかな夏至祭があり、フォークダンスを踊る人たちがいます。
 最も華やかなのは、ダーラナ地方のシリヤン湖周辺の村落での夏至祭です。夏至の週の水曜日あたりから シリヤンスネス、ティブレ、テルベリ、インフェ、レットヴィークなどの集落でそれぞれにメイポールが立てられます。そして金曜の夜の19時頃からモーラとレクサンドで、数千人が集って、大きなメイポール立てが行われます。そのあと、ポールの周りをみんなで踊ります。レクサンドのように大きな会場では、数回踊って終わりですが、ティブレのように小さい村では、夜の11時頃まで踊っていることもあります。いつ、何時に、どこで、という情報は、各地の観光案内所でアドバイスを受けるといいでしょう。一覧表があるので、どうすれば効率よく数多く見ることができるか研究するのも楽しいことでしょう。現地の交通は、夏至祭の頃は鉄道やバスは運休が多く、レンタカーやタクシーの利用をすすめます。しかし、金曜の夜はタクシーは予約しても確実にくることはないでしょう。

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